家の中がムッとする、冬の朝がヒヤッとする…。
そんな“暮らしの温度差”を生む原因の一つが、壁の中の湿気と熱のこもりです。
今回は、本多工務店が手がける「エアサイクルの家」における、断熱・通気・輻射熱の考え方についてご紹介します。
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■ 断熱と通気、どちらか一方では不十分
断熱性能を高めるだけでは、壁の中に湿気がこもってしまうことがあります。
反対に、通気だけを考えても、外気温の影響を受けやすく、冬の寒さや夏の暑さが室内に伝わってしまいます。
つまり、「断熱+通気」こそが本当に快適な家の条件なのです。
エアサイクルの家では、外張り断熱で家全体を包み込み、その外側に空気の通り道(通気層)を確保。
太陽の熱を受けた空気が上昇し、自然の力で空気を循環させます。
機械を使わず、“家自体が呼吸する”ような仕組みが特徴です。
■ 実は「壁の中を通気させる」ことは簡単ではない
一見、どの家にも通気層があるように思われますが、壁の中で計画的に空気を流す設計はとても難しいものです。
一般的な在来工法では、柱や間柱、断熱材が内部で複雑に組み合わっており、空気の通り道を確保するのが困難。
外壁通気はできても、構造体の内部(柱と柱の間)を上下に通気させることは、断熱や気密との両立が難しいのです。
その点、エアサイクルの家では、専用の外張り断熱材(エアサイクルボード)を使用することで、壁の中全体に“縦横無尽な空気の流れ”を確保しています。
床下から壁、屋根裏まで一体的に空気が動くため、構造体の温度差や湿度のムラが少なく、結露や腐朽のリスクを大幅に低減できます。
■ 壁の「輻射熱」も、体感温度を左右する重要な要素
家の中で私たちが感じる“暑い”“寒い”は、単に室温の問題ではありません。
同じ20℃でも、壁や天井の表面温度が高いか低いかで、体感温度は2〜3℃以上も変わります。
これは、壁や天井から出ている「輻射熱(放射熱)」が身体に伝わるからです。
たとえば、夏にコンクリートの壁に近づくとジリジリと熱を感じますよね。
これは壁が日射を受けて熱を放射しているためです。
逆に冬は、冷たい壁が体の熱を奪う方向に放射し、寒く感じるのです。
エアサイクルの家では、断熱材の外と中に通気層があることで、外壁に溜まった熱を逃がし、内壁の表面温度を安定させることができます。
つまり、単に室温を一定に保つだけでなく、「壁からの熱の影響」そのものを減らす設計。
これが、エアコンを強くかけなくても快適に過ごせる理由のひとつです。

■ 湿気をためず、熱をこもらせない家は長持ちする
湿気は住宅の大敵。
壁の中に湿気がたまると、木材の劣化やカビの原因になり、家の寿命を縮めてしまいます。
通気層を設けることで、構造体が常に乾いた状態を保ち、見えないところの健康状態を守ることができます。
さらに、通気によって外壁の蓄熱を減らすことで、夏場の外壁や屋根の表面温度上昇を抑え、構造材への熱ストレスも軽減できます。

■ 冬の暖かさ・夏の涼しさを実感できる家
実際に住まわれたお客様からは、
「冬の朝に部屋の温度差が少なく、ヒヤッとしない」
「夏でもエアコンを強くかけなくても過ごしやすい」
といった声をよくいただきます。
これは、壁の中で空気がゆるやかに循環することで、家全体の温度が均一になりやすく、壁の輻射熱も抑えられるため。
断熱・通気・放射制御の三拍子がそろって、住み心地の良さに直結していると言えます。
■ 見えない部分こそ、設計の腕の見せどころ
断熱や通気の仕組みは、完成してからでは見えない部分です。
しかし、この「見えないところ」にどれだけ手をかけられるかが、家づくりの品質を左右します。
私たちは構造の段階から現場をチェックし、断熱材の隙間、気流の流れ、通気口の位置など、細部まで確認しています。

これから家を建てる方、またリフォームで性能向上を検討されている方も、
「断熱性能の数値」だけでなく「空気と熱の流れ」まで意識してみてください。
きっと、長く快適に暮らせる家づくりにつながります。
■ まとめ
断熱は“温度”を守る技術、通気は“湿度”を整える技術、
そして輻射熱対策は“体感”を左右する技術。
この3つを一体で考えることが、これからの家づくりの基本です。
他の工法では難しい**「壁内通気」**を実現し、湿気も熱もこもらせない。
エアサイクルの家は、見えない壁の中で「空気と熱の循環」をデザインする住まいです。
これから寒くなる季節、家の中の“空気の質”と“壁の温度”にも、少し目を向けてみてはいかがでしょうか。










